理事長兼学長 岡 嶐一

公立大学法人会津大学
理事長兼学長 岡 嶐一

 会津大学はIT技術の専門大学です。そして、大学を支えているものの中心は人です。そのために、人のあり方が、大学のあり方を決めています。そして、最終的には、大学は社会に評価されるものです。あたりまえの話ばかりです。このことを、社会と、IT技術と、その教育とのからみで、みてみましょう。

 産業技術は、発展の歴史があります。そして、時代時代で主役が交代しています。現代では「情報」というものが主役です。「情報」と対をなすものは「実(じつ)のもの」です。人間は生実(なまみ)のものです。それ故、徹底的に衣食住の「もの」に頼っています。しかし、人間の衣食住の「もの」でも、経済に関わるお金の情報、農産物を含む、ものの生産の技術情報、人と人をつなぐ通信情報、人の「文化資本」となる文化情報、と各種の情報と密接に繋がっています。

 いいかえると、現代では、物理的「もの」が、情報という「もの」と不可分で、かつ、情報の役割がますます大きくなっています。さらに、情報が自己増殖するようにもなっています。好き嫌いを超えて、情報があたかも実のものを、時には覆い隠すような時代が、現代というものです。したがって、情報の「生産、消費、制御、処理、保管管理、創造」に関する仕事が増えるのは自然で、情報産業が生産性の最も高い産業分野となっています。

 このような中で、大学は、その教育と研究を通じて、入学する学生を社会で有用な人材に育てることを使命のひとつとしています。そこで、問題となるのは「有用な人材」とは何か、どのようにして学生がそのように育つことになるのか、「有用な人材」となることが学生当人にとって幸せなことなのか、ということです。

 生実の人間をあたかも「生産資材」のひとつのように見なすのは、たとえ「育成」することを目的にしても、最短ではない可能性があるかもしれません。

 人間の成長の仕方は、人間の生物としての長い歴史から、それは想像を超えた複雑さと多様性をもっています。例えば、成長のひとつに、「当たり前のものを異常なものと見、異常なものを当たり前のものと見る」という感性の獲得もあります。そして、司馬遼太郎氏も言っているように、「すべての創造は少年のこころで行われる」ということも成長の一面です。研究はある意味自然を相手にするものであるので、自然の中に埋もれている革新の芽に接触するには「少年のここ ろ」をもつことも必要になっています。そして、「神は細部に宿る」ともいいます。細部にまで徹底する努力ができることも、また必要といえます。「誤解から始まる認知や理解の進展」を行うことなど、その他にもたくさん成長の内容があります。

 これらの成長がないと、本当の「有用な人材」になれません。そう考えると、単に、産業への志向を強くもつのではなく、文化に関わりのある教養と知性への志向をもつことがより必要と言えます。技術の周辺に あって、本質的に必要であるが、必ずしもすぐには分からない、感性を含む知性と教養はなかなか「育成」にはなじまないところがあります。当人の中で、自発的に、それを発展させていくという、広くまた深く思考する「持続する志」によるところが大きい内容です。

 真に「有用な人材」を目指して、技術をめぐる教育と研究について、学生が取り組めるよう、会津大学はこれまで以上に支援を行っていきます。

 さらに、会津大学は、外部の学生や研究者の皆さんにも、社会人にも、教育と研究において開かれた大学となっています。

 昨年、会津大学は、文部科学省のスーパーグローバル大学に採択され、その取り組みもこれから本格的になります。さらには、東日本大震災から4年を経過し、 福島県の復興に向けて、ロボット技術産業への貢献を行うべく、各種の研究開発にも取り組んでいきます。これらの活動を通じて、学生、教職員、大学外部の方々との相互の連携が実のある結果を生むべく、生産的思考で取り組んでいきたいと思っております。

2015年4月

 会津大学 戊辰150周年の部屋 理事長エッセイがあります。

略歴

学歴
昭和45年 東京大学工学系研究科計数工学科修了
職歴
昭和45年 通商産業省工業技術院電気試験所 研究員
昭和60年 National Research Council of Canada 客員研究員
平成5年 新情報処理開発機構つくば研究所 部長兼室長
平成14年 会津大学コンピュータ理工学部教授
平成26年4月 会津大学理事長兼学長就任

詳しくは教員紹介およびこちらのサイトをご参照ください。

最終更新日
2015年10月06日

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